なんだか秋っぽい景色。8月下旬の真夏の北海道・日高にて。
雑記
雑草
林、と言えるかどうかも微妙なくらいの、道路際の小さな植林帯。
足もとの雑草たちの上に写るほのかな暗がりのなかに身を置くと、
道をとおる車の音が少し遠くに聞こえるような不思議な感覚を覚えます。
いつかどこかで見たことがある気もする、雑草たちの懐かしい静けさ。
台風の通り過ぎた土地に、
静かな時間と日々の暮らしが戻ること、
心から、祈っています。
岩の壁
山のなかに道をつくるために削られた、岩の断面。
自然のままのやわらかな環境の中に、突然の人工的で鋭利な感触。
どこか建築的でした。
風の跡
枯草が風のふいた向きに倒れていて、
そのなかにうずくまるようにして、いくつかの草がぼんやりと立っている。
という感じの、それだけの景色。とても印象的だった。
ひと
山で見たひとについて記憶に残るのは、なぜかいつもたいてい後ろ姿。
深さ
森の中を歩きながら、カメラをぱっと出してシャッターを押そうとすると、
安物のカメラでは焦点が一向に合わず、ぼんやりとピンボケの風景しか映らない。
そんなことが結構ある。
そうした場所にはたいてい、
簡単に写真のなかに写すことが難しいような「深さ」がある気がする。
カメラのピントがすぐに合ってしまうような浅い「風景」ではなくて、
全方位からひとの身体をつつんでしまうような深い「空間」。
たとえばアルヴァ・アアルトの建築。
それから、前川国男の晩年の建築。
それらの素晴らしい建築には、独特の空間の「深さ」があって、
その根っこには、もしかしたらこんな森の風景が広がっているのではないか。
そんなことを時たま考えます。
ひとが還っていく場所の原型は、
ピントの合わない森のなかに隠れているのかもしれない。
(もしくは、ただ単に写真を撮るのが下手なだけなのかもしれない。。。)
雲のかげ
見渡すかぎり誰もいない草原のうえを、雲のかげがゆっくりと動いていた。
八木重吉の「白い雲」のような景色。