雨の椅子

9月の雨の日。だれもいないかと思ったけれど、おんなじ道をおんなじペースで歩いていくひとがひとりいて、そのひとと巻き道のたびに静かに前後しながら、ぬかるんだ道をてくてくと進んだ。

小屋のところでは、くすんだ色をした木製の古い机と椅子が、まだ夏の名残りのあたたかさの残る白い雨にしずしずと打たれていた。晴れた日にはたくさんのひとの賑やかな声で溢れているのであろうその古い木の家具たちには、その日は誰も座っていない。あたりは雨の音でしーんとして、なんだかどこか教会のようだった。