未踏の岩壁を登攀したり、誰も見たことすらない渓を遡行したり。そのような場所を自分の足で踏んでいくことに情熱を燃やしたひとたちの文章を読んでいると、素直に心から憧れる。ほんとうにすごいと思う。

では自分はどうだろうと考えると、自分自身はそんな道を辿る技術も経験も勿論まったくもってないけれど、自分にとってのそれは、たとえば多くのひとが見過ごしてしまう静かな山の脇道や、忘れられた古い小径や、誰もいない小さな岩の連なりだったりもするのかもしれない。

それってなんだか、建築について思うこととおんなじだなと思う。自分がやりたい仕事とおんなじだなと思う。つくりたい建築は、自分の歩きたい道に、いつまでたってもやっぱりとてもよく似ているから、だからこんな地味な道を懲りずに何度も歩いてみたいと思うのだろうか。

、、、などということを考える暇なんて勿論ないくらい、バテバテになりながらブツブツひとりごとを言いつつ登った岩の連なりの上からの、その日歩いた静かな稜線。