鹿と歩く

東京の奥多摩駅から長野の川上村まで、奥秩父の山々のなかを歩いた。
3日のうちの丸2日間はまったくひとりの人間にも会わなかった。
あちこちで鹿と出会う。
稜線のうえでも、ひらけた草原でも、テントを張ったところでも。
あんなにたくさんの鹿と目を合わせたのは初めてのことだった。
すぐそこの茂みからじっとこちらを見ていたオス鹿の佇まいが忘れられない。
立派な角、堂々とした落ち着き、他者への静かな眼差し。
あんなふうに生きてきたから、彼はいまここに生きているんだろう。