山の朝

ある失われてしまった命をぼんやりと思って、目が覚めた朝。

忘れないようにしたいと思う。
だけどひとは、いつかどうしても忘れてしまう。

どんなものが見えたのだろう。

それを想像すると、蒼くてどこかぼんやりとした、霧のような雲のような流れのような澱みのような、なにかそういうものの像がゆらゆらと意識の内に浮かんでくるような気がして、それってなんだか山のようだなと思った。