陽の傾き

この時期の光は、一瞬一瞬であまりにも刻々とその様相を変える。傾いていく陽の光は、普段の街の雑踏の中にたくさんの見知らぬ模様を浮かびあがらせて、次の瞬間にはもうその模様を泡のように消し去って流れていく。

目の前にある平凡な場所にはきっと数えきれないほどの無数の一瞬があって、ひとはその一瞬をいつも見逃しながら過ごしているのだということを、その傾きの速度はさりげなくひとに知らせる。