消えていくもののかたち

ひとけのない小さな里山を歩いていると、細い道すじや踏み跡が植物たちに覆いつくされ、消えていこうとしているところに出くわすことがある。

ひとがつくった道や痕跡が、その人工物としての明快さや明瞭さを失い、植物たちのなかに溶けて、どこか遠いむかしの状態に還ろうとしているかのような風景。

そこには、その人工物を消していこうとする「時間」や「自然」の存在がぼんやりと不明瞭な状態のまま可視化されているようなところがあって、美しいなと思う。なにかの痕跡が消えていくところに、それでもまだなお存在する「かたち」があるとしたら、それはどんなものだろう。