朽ちたものの芯の部分

ある時、とある板画家が、指導する学生の彫っていた人体の彫像に横から手を加えていくうちに、次第に熱を帯びていき、彫像はみるみるうちに細く細く削り取られ、儚く崩れ落ちるほどの細さになり、終いには全てが削り落とされて、目の前からは何も無くなってしまった。

先日、たまたま立ち寄った資料館に、もはや原型もはっきりとは分からないほどに朽ち果てている、小さな木彫りの仏像があって、その静かで素朴な美しい姿に、その場を立ち去りがたい深い感動を覚えるとともに、大好きな板画家・棟方志功のそんな逸話を思い出しました。