坂道

小屋にむかう道の途中に、両側に斜面が落ちたちょっと小高い丘のようなところを走る道があって、その稜線の上を今日もまっすぐに自転車を走らせる。

少し前にざーっと降った雨はすぐにやんで、ギラギラとした夏空のむこうにさっきまでの雨雲のかたまりが流れていく。

稜線の上から左の坂道のほうを見下ろすと、白い帽子をかぶった女の人が自転車を漕いで坂道をおりていく。その後ろ姿のむこうにガランとした学校のグラウンドが広がって、その先にひらけた視界の中に大きな夏の空がよこたわっている。

モクモクと横に伸びていく真っ白い入道雲のうえに、いつか見た蒼い山脈がそびえているかのような錯覚を覚えながら、わずかな高揚感と共にいつもの稜線のうえをゆっくりと走る。

小屋へむかう道には、いつもどこかに、なんてことのない小さな小さな山がある。