「当店の手焼きせんべいは、私たちが家族で、心をこめて焼いている正真正銘の手焼きせんべいです。」
事務所から少し歩いたところにある隣町に、古い小さな煎餅屋さんがある。年配のご夫婦がおふたりで営まれている煎餅屋さんで、最近は二代目の方の姿も頻繁にお見掛けするようになった。
その煎餅屋さんのせんべいは、しっかりと塩味が効いて固さや揚げ具合も素晴らしく、本当に美味しくて、月に一度くらいの頻度で買いに行っては1回で食べきってしまわないように自分を律して、大事に大事にパリポリといただいている。その美味しさを友人知人にもやんわりと伝えたくて、どこかに行く時の手土産やちょっとした御礼などには、その煎餅屋さんのあられやおかきを持参したりすることも多い。
そんなふうにして時たま通っている大好きな煎餅屋さんのことを、今朝、ひょんなことからインターネットで調べることになって、そのときに冒頭の言葉が目に入った。
なんといえばよいのか、言葉には表わすことのできないような小さな感動がじわじわと押し寄せて、この言葉を書いたのであろう店主のご夫婦の姿がはっきりと脳裏に浮かんできて、ずーんと心をうたれた。
それから、こんな誇りを胸に抱えながら、今日もどこかの町で、こつこつと手間暇をかけて静かに何かをつくっているのであろう、見ず知らずのたくさんの人たちのことを想った。
自分もいつか、こんな言葉を言えるような人間になれたらと思う。なりたいと思う。