森の中を歩きながら、カメラをぱっと出してシャッターを押そうとすると、
安物のカメラでは焦点が一向に合わず、ぼんやりとピンボケの風景しか映らない。
そんなことが結構ある。
そうした場所にはたいてい、
簡単に写真のなかに写すことが難しいような「深さ」がある気がする。
カメラのピントがすぐに合ってしまうような浅い「風景」ではなくて、
全方位からひとの身体をつつんでしまうような深い「空間」。
たとえばアルヴァ・アアルトの建築。
それから、前川国男の晩年の建築。
それらの素晴らしい建築には、独特の空間の「深さ」があって、
その根っこには、もしかしたらこんな森の風景が広がっているのではないか。
そんなことを時たま考えます。
ひとが還っていく場所の原型は、
ピントの合わない森のなかに隠れているのかもしれない。
(もしくは、ただ単に写真を撮るのが下手なだけなのかもしれない。。。)