手間と暇

「手間ひまをかけるとは、時間をかけ、労力・技能も十分に費やし、丹念に制作・作成する、という様子を表現する言い回し。手間は労力、ひまは時間を指すと捉えられる。」(インターネット上の辞典より。)

自分の暮らしは、いったいどれほどの人の手間とひまの上に成り立っているのだろう。見たことのない遠くの誰かの数えきれないほどたくさんの手間とひまの上に、こうして能天気に座っている自分自身は、いったいどのくらいの手間とひまを還せているのだろうか。どのくらいの手間とひまを、自分以外の何かのためにかけられているのだろうか。

ついついボケーっと休んでしまいそうになる右手を眺めながら、机の前で漠然とそんなことを考える。背中にあたる午前の光がぽかぽかと暖かい。今日ものんびりと、ボチボチこの右手を動かしていこう。ちょっとずつ、動かしていこう。小さくても、意味がなくても、誰のためにもならなかったとしても。

写真は、あるお寺の裏方にあった古びた流し場。知らない誰かの手間とひまの痕跡がそれぞれの素材の表面にくっきりと刻まれていて、美しかった。