瓦葺きの日本家屋や、曲がりくねった松の木や、ピカピカのモダンな建築や、モクモクと明るい入道雲や、ツルっとした案内板や、ガラス張りのエントランスや、ひなびた縁側の物干し竿や、ごうごうと音をたてる室外機や、だだっ広い駐車場や。そういったものたちに囲まれながら、一本の古い尖塔がどこか居心地悪そうに、じっと空に隠れるようにして立っていた。
「すぐれた表現はすべて自己懐疑的である。」
いつどこで見た言葉だったのか、そもそもこんな言葉だったのか、まったくもってさっぱり思い出せないひとつの言葉がぽわんと目の前に浮かんで、むこうの空をつんざいた。