小さな夏

開け放たれた窓から見える広々とした青空と入道雲の風景に夏の気配があるのは当たり前のことだけれど、時には暑さのあまり閉ざされた部屋の中にふとした隙間から差し込んでくる小さな光から夏の気配が静かに零れ落ちてくるようなこともある。

どこか遠くへ行くことが制限され続けることで逆説的に生き生きとした遠くを想像することがあるように、たったひとつの調味料で味付けされた食べ物がさまざまな味覚を呼び覚ますことがあるように、抑えこまれ、絞りこまれたものだけが伝えることのできる何かがあったりもするように思う。