若い頃に衝撃をうけたひとつの短い文章が、きのうたまたま机の上に出してあった本の表紙に小さく印刷されていて、その文があまりにもいまの自分にすーっと響いてきて、驚いた。若い頃の自分は、この文のいったいどこに衝撃を受けたんだろう。。今だからこそ実感をもって読むことのできる、強くて芯のある低い言葉だった。
それからそのひとが、自分のつくっているものや仕事は誰かの小さな世界を守るためのものだ、というようなことを別のところでハッキリと書いているのを目にして、あらためてもう一度、ハッとした。その言葉はそのひとが自分の手でつくった小さな家のことを、まるごと一言であらわしているような、研ぎ澄まされたやわらかい言葉だなあと思った。
そのひとにはあるとき一度だけ偶然にお目にかかったことがあって、その日、そのひとが座っていた小さな家の中の巣のような暗がりに、いまの自分の意識をもう一度集中させて、記憶のなかのそれを手探りで探ってみたりした。木の梯子をのぼった先にはたしか、誰もいない静かな屋根裏の部屋があった。