緑道の入口についたとき、奥のほうの水がパシャパシャと波打っているのが見えた。
ザックの中身をガサゴソとやってカメラを探してみたものの、昼飯の包みやら水筒やらが手の先に押し寄せては帰っていくばかりで、肝心のカメラはちっともみつからない。
仕方なく携帯をとりだして緑道を歩きはじめた頃には、もう玉川上水の浅い水を波打たせた主たちはどこかに去ってしまっていて、水辺はさっぱりと誰もいない。道のむこうに今日もまたガードマンさんが見える。
わずか数十メートルの緑道のつきあたりに、2週間くらい前からずーっと気になっていたひとつの綿毛があって、すこしの間それを眺めてみる。ぴーんと伸びた茎とパヤパヤのまん丸い綿毛。ほっそりとした幹のかげ。なめらかになびいている手前の草。
ガタンガタン。ゴトンゴトン。背中の後ろにある橋桁のホームに各駅停車が到着してドアが開く。その音に呼応するようにして、目の前の綿毛がぽわーんぽわーんとゆれる。軽いということの良さがふわっと一瞬、見えたような見えなかったような。なんだかそんな感じもした。