和菓子屋さん、ワンタン麺屋さん、布団屋さん、パン屋さん、手芸屋さん、煎餅屋さん。この数年の間に近所では、お世話になったいくつもの古いお店が小さな店先のシャッターを閉めた。
後を継いでくださるひとがいたら良かったのになあと茫々と思う一方で、それらのお店の素晴らしさは、その「お店」とそれを営んでいる「ひと」ととが切り離せない関係であるからこその素晴らしさだったのだとも感じる。
ものとひと。あるいは空間とひと。それらがもっとも密接な関係を結ぶのは、そこに在るひとが「ひとり」である時だと思う。動かす手の数が少なければ少ないほど、その手がつくりだす「もの」と、それをつくる「ひと」との関係は、切り離すことのできないものになっていく。
そのひとのつくった和菓子じゃなければ、そのひとのつくったワンタン麺じゃなければ、そのひとのつくった煎餅じゃなければ、ダメなのだ。そうじゃなかったら、もう、その店がそこに在り続ける必要は、きっとないのだ。その潔さ、その静かな強さが、閉めてしまった小さなお店ひとつひとつの眩いような美しさなのだと、自分には思える。