勝浦の家

外房の海のはるか彼方、水平線までを見わたせる澄みきった風景が広がるこの土地は、
同時に海からの風をダイレクトに受け、既存家屋の屋根や雨戸が嵐のたびに
吹き飛ばされてしまうほどの猛烈な風雨が吹き荒れる場所でもあった。

「風雨に対して強く、それでいて開放的な住まいをつくりたい。」

そんな建主さんからの要望を受けて、ここでは、
風雨を受けとめる寡黙な外殻と、美しい自然をつかまえる明るい内部という
相反する2つの要素がひとつの屋根の下に共存するような
この場所にしかない簡素で力強い建築のあり方をさがした。

大工さんが真っ黒になるまで手焼きしてくれた焼き桧の板を張った外殻は、
暴風への備えから全ての窓に雨戸を設え、
軒をおさえた寄棟屋根を全方位に葺きおろすことで、
どこか古い沖縄の民家を思わせるような素朴で普遍的な佇まいを目指した。

内部では、大きな木製窓と手刻みのシンプルな木の架構による一室空間の中に
職人さんの手の跡を残す手触りに満ちた小さな要素を丁寧にひとつずつ配置していくことで、
ものをつくる手の痕跡とやわらかな自然光とが生みだす凛とした美しい陰影によって
暮らしの場を大らかに包みこむことが出来たらと考えた。

自然に対して頭を垂れるように寡黙に佇みながら、豊かで静謐な内部のふくらみを獲得すること。
この土地を訪れた際、真っ先に脳裏に浮かんだそんな建築の姿を絶えず設計に重ねた。

用途:住宅(新築)
延床面積:85.38㎡
構造:馬場貴志構造設計事務所
施工:木組
写真/映像:金田幸三

[掲載誌]
architecturephoto.net (2019.04.10)