遠く霞むもの

設計というものは、遠くのほうに霞んで見えるものを
線と文字を数字をつかって、
自分の手元に手繰り寄せていく作業のことかもしれない。

何重にもかさねたトレーシングペーパーの束を見ながら、
時たまそんなことを考える。

それは、早朝、朝靄につつまれた集落のむこうに見え隠れする山へと
入っていくあの時間と、どこか似たところがあるような気がする。

(写真:金田幸三)