螺旋

川沿いの公園に、ひっそりと誰もいない空き地のような場所があって、去年のあたたかい時期には時たまそこに歩いていっては、いつもより広い空を見上げてみたりしていた。

その公園の空き地のあたりにはよく、まるでテントを担いで山に登るかのような大きな荷物を背負ったひとがいて、ある秋の朝、そのひとがその空き地のような場所を横切って、フェンスに沿って土のスロープをのぼり、どこかむこうのほうへと歩いていくのが見えた。
土のスロープをあがった先に、その空き地のフェンスのむこうに出ることのできる道があることをその時の自分は知らなくて、自分の近くを通りすぎて、うつむき加減でゆるやかなスロープをのぼっていったその人の姿が、どういうわけだかその後もしばらく記憶に残った。

この前のある日。その空き地の前を通りかかると、土のスロープのまわりに太陽の光が落ちていて、その光が時計回りの螺旋を描いて、スロープのうえの、フェンスに沿った道の先のほうへと続いているのが見えた。大きな荷物のひとの姿は見あたらず、あたりでは鳥たちが地面に落ちた実を静かについばんでいた。なんていうことはない螺旋の形が、地面のうえに何かの軌跡を描いているようで、美しかった。