猫の足跡

左官の壁の色味を決めようということになって、
左官屋さんが3種類のサンプルをつくってくれた。

お施主さんと大工さんと現場に集まって、
3つのサンプルを眺めた。

たぶん左官屋さんは、それが乾ききる前に大工さんに
そのサンプルを渡したのだろう。

3つのうち、ひとつのサンプルにだけ、
大工さんの飼い猫の足跡が点々とついていた。
まるで自分はこの色が良いと言いたげなようだった。

お施主さんは迷わずその色を選んだ。

(写真:金田幸三)