海と小屋

北海道。夏になると、毎年一度、必ず訪れる街がある。
そのたびに、この古びた小屋の前を自転車で通り過ぎる。

多くのひとにとっては、たぶん気にも留めないような、
ありふれた些細なものであったとしても、
誰かにとってはそれが、他の何ものにも絶対に代えがたい
重要な存在であるもの。

それがただそこに「存在している」ということ自体が価値であるもの。

この小屋は自分にとってはどうやらそんな存在で、
遠くの海をじっと見つめて黙りこくって立っているその姿に、
なぜだかいつも、心を打たれてしまう。