木の実

木の実のことを「このみ」と呼んでいるひとを見ると、懐かしさにも似たなんともいえない感覚が、すーっと心に浮かんでくる。その言葉の音色には、ひとが実をたべる生き物であることを思い起こさせるような、原初的でふくよかな響きがつまっている。ふかふかになった冬の落ち葉をがさごそと踏むものの音が、どこか遠くのほうから小さく聞こえてくる。