帰り道。ほとんど揺らぎもない桜の水面の横を抜ける。
静まり返った街と、一目散に家路を急ぐ人たち。

ひとの気配のない個人経営の小さなお店。毎日書きかえられるいつもと変わらぬ手描きの黒板。綺麗に掃除されたガラスの奥の誰もいないカウンターの灯り。言葉が出ない。

今朝、川沿いの道でジュウイチによく似た鳴き声を聞いた。何度も聞いた。本当にいるのだろうか。空を仰いでも姿は見えずじまいだったけれど、もしこんな東京に、ジュウイチがやって来ているのだとしたら、ありがとうと言いたいような気がする。