川沿いのみち

上流から何度かのゆるい蛇行をくりかえした川は、ちょうどそのあたりでまっすぐに西から東へと流れの方向を変えて、その川に沿って両側にまっすぐな細い道がつづいている。南側にはケヤキ並木が、北側には大きな木々の生えた古い家が並んでいるから、東西の方角にだけ空がぬけている。

このまえのある日、いつもそうするように、その川に沿って西のほうへと歩いていって、それからしばらくして東のほうへとてくてくと歩いて戻ってきた。きーんと空気が冷えはじめた秋の夕暮れで、西の空にはムクドリの群れが羽ばたいて、東の空にはまん丸い月がぽかんとひとつ浮かんでいた。

ムクドリたちは西のほうへと飛び立ったかと思うと、ぐるりと旋回して、また同じ古い大きな木の上のほうへと戻ってくる。するとその木の中でヒヨドリとオナガがざわめいて、ムクドリを追い払う。追われたムクドリたちはまた西の空へと羽ばたいて、それからぐるりと旋回して、そうしてまた、ヒヨドリとオナガが大声でざわめきだす。

その様子を見ていたのか、あるいは気にもとめていなかったのか、木の下のあたりの川から一羽の大きなシロサギが飛びたって、川沿いを西のほうへと飛んで、それからやはりぐるりと旋回して、東のほうへと戻ってくる。すーっと下降した白い翼は、川のへりの下へと見えなくなって、音もなく水のうえへと滑りこむ。

二羽のカモが東のほうから水平に飛んできて、真っ赤に燃えた西の空をまっすぐに見すえながら速度をあげていく。川のほうを見下ろすと、また別のカモが二羽、ゆるやかな流れに乗るようにして水の中を東のほうにすいーっと静かに進んでいく。

川と道のへりのところから何かの雑木が川に向かって生え出して、川面に小さな木陰をつくっている。水中を行く二羽のカモは夕陽に照らされた明るい水面から、その小さな雑木の影のほうへとゆっくりと後ろ足を漕いで、それからその木陰の中にすいこまれる。カモの背中で夕方の光と葉っぱの影がちらちらとゆれる。

「細長い世界だね。」

すぐ横を通りすぎていった小さな女の子が、手を引いて歩く母親のほうをむいて、そんなことを言っているのが聞こえた。