乾いたかたち

モノには、あるいはモノのかたちや幾何学には、それぞれに異なった湿度のようなものがあるのかもしれない。湿ったかたち。乾いたかたち。

湿ったかたちがどこか生命のような有機的なものの存在を思わせるとしたら、乾いたかたちが映し出しているものとはなんだろう。山の奥で乾ききったかたちのまま立ち尽くすもの。海辺の乾いた砂の上に置き去られたもの。

夏の雨の日。霧のむこうで立ち枯れていた1本の木のかたちに憧れにも似た不思議な感情を覚えたことがあった。幻想のごとく漂う霧の中、その木のかたちだけが、なんだかとても醒めていた。