丸文字の男

我ながら、小さい頃から全然文字が上達しないなあと思う。

丸文字である。しかもかなり平凡な丸文字である。
万年筆でさらりと手紙を書ける人、文字と文字を川の流れのように
ひとつの筆で繋げて書ける人に、憧れながら暮らしてきた。

でも、手描きで図面を描くようになって、
図面の世界の中でだけには、なんだか下手くそな丸文字の居場所も
あるような気がしてきた。

「丸文字の人は設計屋に向いている。」
そんなことをある時誰かに言われた。

それが誉め言葉なのかどうか、結構怪しんでいるのだが、
下手は下手なりに、丸文字は丸文字なりに、
自分の手で文字を描いていけば良いのだろうと思っている。