ワタスゲ

去年の夏のワタスゲ。別名「雀の毛槍」というのだとか。
ふわふわ風に揺れるこの白い種子のかたまりが出来る前の、雪の溶けた湿原に咲く、枯草と見間違うような平凡で地味な黄緑色のその花を、きりっと引き締まった寒空の下で、見たい。

今日は窓の外の木々を揺らす風はなく、ひどく乾いた声でカラスが鳴いている。どんよりと曇った空には雀の姿も見当たらないけれど、遠いどこかの湿原の足元では、雪にくるまれたワタスゲたちが、身を寄せ合い息を潜めながら、じっと、ひっそりと、雪解けの季節を待ち続けているに違いない。