タイルの音

洗面室と浴室の間の扉やガラスの納まりは、
もしかしたら、建物の中で一番気をつかう箇所かもしれない。

さまざまな材料、さまざまな職人さんの手が交差しながら、
水と床とが出会うところ。

こういう図面を描きながら四苦八苦していると、
スタッフ時代、一番最初に担当した現場で浴室の暗がりの中、
ひとりタイルを小さく切っていたタイル屋さんの背中を思いだす。

その時のタイルを切る手の動き、
灰色のタイルが切れていく音。
なぜだろう。とてもよく覚えている。