スズメ

しばらくのあいだベランダに生えたヒエやらアワやらを早朝に必死に脱穀しに来ていたスズメたちも、冬至が近づくにつれてすっかり寝坊助さんになり、人間のほうが早く目を覚ますようになってきた。

この前の朝、遠い国のあるベース弾きのひとが亡くなって、彼の遺した半世紀ほども前の音楽たちを何度も再生した。そのなかのひとつに、あるグループのバックで彼がベースを弾いたものがあって、それは一般的には決して有名だったり評価されたりしたものではないのだけど、自分はどうにもその頃の彼らの音楽のうしろで低く鳴るベースとドラムの音が大好きで、地面の上から空を見上げて踊りだすようなその音を、やっぱりその朝も幾度かくりかえし聞いていた。

窓の外にはいつものように寝坊したスズメがやってきて、庇のうえにとまってガサゴソと何かをやっている。草のあたりにはいないから、どうやら今日は脱穀をしに来たわけではないらしい。

「チュンッ。チュンッ。」

しばらく聞き耳をたてていると、寝坊助の彼はスピーカーの中のベースの音にぴったりとリズムを合わせるかのようにして短く何度か鳴いた。そうしてそれから元気に羽ばたいて、よく晴れた冬の空をまた次のどこかへ飛んでいった。