ひかりの角度

夕方、事務所のロールスクリーンの布地の上をゆらゆらと移ろっていた光。
斜めのラインがすーっと通り、やわらかな濃淡があって、きれいだった。

あたりまえのことだけれども、少なくとも自分が暮らしている場所では、いつも光は斜めから射してくるし、そうした斜めの光に呼応して屋根がつくられ、窓があけられて、ひとの暮らしが営まれてきた。

地球のどこかには光がまったくの垂直や水平に降り注ぎつづける光景もあるのかもしれないけれど、たぶんそれは自分にとってはとてつもない非日常の体験になるのだろう。山のうえで見る朝日や海のなかで見る夕日に感動を覚えるのは、その角度が水平に近づく一瞬があるからでもあるのだと思う。

もしまったくの垂直や水平の角度を保ったままひとを照らしつづける光があるとしたら、たぶんそこには自然の生あたたかさのようなものはなく、自分のような人間はそこで生きていくことは出来ないのかもしれないけれど、でもやはりそれは、ずっと見ていたいような光景でもあるのだろうなあと思った。