いれるもの

3月。最終日にぎりぎり間に合って行くことが出来た友人の展示。
置かれていたモノも空間の雰囲気も、どれもとても感じがよくて、こんな良い展示ができて羨ましいなあと思うような、そんな展示だった。

展示されていたものの中で、どれを購入させてもらおうかいろいろと迷って、悩みに悩んだあげく、小さな蓋つきの壺のようなものをひとつ買わせてもらった。

普段使いできそうな湯飲みとかお皿とか、魅力的に思えたものは他にもいくつもあった。しかし、その小さな壺のようなものだけは、それにいったい自分は何をいれたらいいのか、全く思いつかなかった。本当に、全然思いつかなかった。いれるものをぼーっと考えているうちに、時間ばかりがどんどんと過ぎた。

そうこうしているうちに次第に、「いくら考えてみてもそこにいれるものが全く思いつかない」というのはなんだか面白いことなのかもしれない、という感じがしてきた。そして、それにいれるものが思いついた暁には、きっと今までにない新鮮な心地がするような気さえしてくるようになった。それで、長居の末、その壺に決めた。

それから2カ月以上経った今、事務所の机の上には、他のいろいろな器にまじって、その小さな壺が空っぽのまま、ちょこんと座っている。いれるものは相変わらず、全然見つかっていない。

いったい全体この壺のようなものには何をいれたら良いのだろう。。だいたい何をいれる想定なのだろう。。というかこれはそもそも壺なのだろうか。。なぜこんなにもいれるものが思いつかないのだろう。。わからない。。いれるものがわからない。。イレルモノガゼンゼンワカラナイ。。。途方に暮れて頭を抱える人間のすぐ脇で、小さな壺がせせら笑うように座っている。