尊敬するひとが、いろいろな土地にいる。
そのひとたちの暮らす場所を訪ねさせていただいているうちに、
自分が尊敬するのは、なにかを「耕している」ひとなのではないかと、
最近、ふと気がついた。
土を、畑を、森を、あるいは庭を、
自分の身体をつかい、太陽の下で黙々と耕すひと。
そして、そのひとたちが丁寧に、地道に、心をこめて耕してきた土地のうえに、
ある日突然、そんなことなど全く気にもとめぬ顔で、ピカピカの建物が建てられる。
「建築をつくること」と「耕すこと」の間には、途方もなく大きな溝があって、
その溝はどんどんどんどん大きくなっていく。
その間に、なんとかして、小さな小さな橋を架け渡すことができたら良いのに。
そんな考えをぼんやりと、でも確かに抱きながら、
毎日を暮らし、設計をしていきたい、と思った。