勝浦の家

外房の海の遥か彼方、地平線までを見渡せる澄み切った風景が広がるこの土地は、
同時に海からの風をダイレクトに受け、
既存家屋の屋根瓦や雨戸が吹き飛ばされて
しまうほどの猛烈な風雨が吹き荒れる場所でもあった。

風雨に対して強く、それでいて開放的な住まいをつくりたい、という建主の要望を受けて、
防御的な閉じた外殻と、大らかに開かれた透明な内部、という相反する要素が
互いに共存するような建物のあり方を模索した。

真っ黒になるまで手焼きした桧板を張りめぐらせた外殻は、
木製サッシの全てに雨戸を閉められるよう各所に戸袋を設え、
暴風への備えから軒の出と高さを抑え、寄棟屋根を全方位に葺きおろすことで、
どこか古い沖縄の民家を思わせるような素朴で力強い構えを醸し出すことになった。

内部は大らかな一室空間を柱と梁によって緩やかに領域分けし、
余分な部材を排した原初的な架構が生活の場を柔らかく包み込む構成とすることを通じて、
木造在来工法の持つ簡素で凛とした美しさと、
大きな開口部に切り取られた周囲の澄んだ環境とが響き合い、日々の生活の中に、
自然に包み込まれる解放感と安心感とを同時にもたらすことができればと考えた。

自然に対して頭を垂れるように寡黙に佇みながら、豊かで静謐な内部のふくらみを獲得すること。
この土地を訪れた際、真っ先に脳裏に浮かんだそんな建築の姿を絶えず設計に重ねた。

用途:住宅(新築)
延床面積:85.38㎡
構造:馬場貴志構造設計事務所
施工:木組
写真:金田幸三